ザラメ付きはちみつパンケーキはみんなに大好評だったよ。
でも、僕はやっぱりちゃんとオーブンで焼いたのが食べたかったんだよね。
「ほんとは生地を型に入れて、もっと大きなのをオーブンで焼きたかったんだけどなぁ」
「あら、それなら試行錯誤してきちんと完成させるから、私としてはその時食べてもらえたら嬉しいかな」
僕のつぶやきに、にっこり笑いながらそう答えてくれるアマンダさん。
パンケーキみたいに焼いたのはちょっと焦げちゃったけど、オーブンで焼く時ははちみつを入れる量とかオーブンの温度とかをいろいろ試してちゃんとしたお菓子にするつもりなんだって。
「だからルディーン君。このお菓子が完成したら、うちの店で売り出してもいいかな?」
「うん。アマンダさんがちゃんとおいしいのを作ってくれるんでしょ? だったらいいよ」
と言うわけでこのザラメとはちみつが入ったのスポンジケーキは、普通のと一緒にこのお菓子屋さんで売られることになったんだ。
「いいなぁ、オーブン」
スポンジケーキとかを作って思ったけど、やっぱりオーブンがあるといろいろ作れていいなぁって思ったんだよね。
だからついこう言っちゃったんだけど、
「ルディーンは魔道具が作れるんだから、オーブンも作れるんじゃないの?」
そしたらキャリーナ姉ちゃんがこう聞いてきたんだ。
「無理だよ。だって僕、オーブンの作り方なんて知らないもん」
「そっかぁ」
魔道コンロなら見ただけで、どうやれば作れるか解るよ? でもオーブンは解んないんだよね。
村にはパンを焼く石窯があるけど、あれは中で薪を燃やしてその火で焼いてるんだよね。
だけどお菓子を作ろうと思ったら、あんなやり方だとうまく焼けないよね? って僕、思うんだ。
「えっと、ルディーン君。あなた魔道具まで作れたの?」
そんな事考えてたら、僕たちの話を聞いたルルモアさんが不思議そうな顔して聞いてきたんだよね。
だから僕、作れるよって言ったんだけど、
「魔道具って作るのがものすごく難しいって聞いてるんだけど……まぁ、ルディーン君は魔法まで使えるくらいだし、簡単なものなら作れてもおかしくないかもね」
そしたらルルモアさんはこう言って僕の頭をなでた後、魔道オーブンの構造なら知ってるから聞く? って言ったもんだから、僕はびっくりしたんだ。
だからなんでそんなこと知ってるのさ? って聞いたんだけど、
「なんで? って、多分それくらいの事はアマンダさんでも知ってると思うわよ」
そしたら知ってるのが当たり前みたいに言われちゃったんだ。
「そうなの?」
「ええ。作り方は解らないけど、魔道オーブンの仕組みなら私も知ってるわ」
アマンダさんが言うには、料理人なら大体知ってるんじゃないかなぁだって。
なんでかって言うと、魔道コンロが売り出されたときに、これがどんな魔道具なのかを商業ギルドが宣伝したからなんだったさ。
「今は魔道オーブンなんてものが開発されたからお菓子作りも簡単になったけど、石窯しかなかった頃はとても苦労したのよね」
うちの村にもある石窯は中で薪を焚いてるから、お料理を入れる場所で温度がすっごく違うんだよね。
でもそんなのだと、クッキーとかは焼けないでしょ? だから最初は釜の中がおんなじ温度になる薪オーブンが開発されたんだってさ。
「そのころのオーブンはね、料理を作るところと薪を燃やすところを別にして、薪を燃やした熱を料理する炉に送り込んで焼くって方式だったのよ」
この方法だと火が直接当たんないから、石窯よりはオーブンの中の温度がおんなじくらいになったんだって。
だけど、このやり方でもやっぱり空気が入ってくるとこが一番熱くなっちゃうんだよね。
だからこのオーブンでおんなじ料理をいっぱい作んないとダメな時は、その空気が入ってくるとこの近くには入れる事ができなかったんだって。
「でも魔道オーブンの登場で、その状況が一変したのよ」
アマンダさんが聞いた話だと、魔道オーブンってお料理する場所が鉄でできてるんだって。
でね、その回りに魔道具を使って熱い風を入れる事で炉の中全体が熱くなるようにしてあるんだってさ。
「うちの店のは火の魔石も使っているけど、こういう構造だから熱源は薪を使って、熱い風を送るところだけ魔道具を使ってる魔道オーブンを使ってるところもあるのよ」
「へぇ、そうなのか」
そう言えば火の魔石はとっても高いけど、風を送るだけなら無属性の魔石で羽を回す魔道具を作ればいいからそんなに高くないもんね。
「私が知ってるのはこれくらいだけど、参考になったかしら?」
「うん!」
どうやって作ったらいいかまではまだ解んないけど、魔道オーブンの中がどうなってるのかが解ったから、お家に帰っていろいろやってみれば多分大丈夫だと思うんだ。
それに僕は火の魔石も風の魔石が作れるから、アマンダさんが言ってたのよりもっと簡単にオーブンの中の空気を温められると思うんだよね。
だから僕、お家に帰ったらいろいろやってみなきゃって思ってたんだけど、そしたらキャリーナ姉ちゃんが不思議そうな顔して聞いてきたんだ。
「ねぇルディーン。これでもうお家にオーブン、作れるの?」
「う〜ん、やってみないと解んない。でも、多分大丈夫だよ」
「そっか。ならお家でも、もっといろんなお菓子が食べられるようになるね」
だから多分大丈夫って言ったら、お姉ちゃんはこう言いながらうれしそうに笑ったんだ。
「ルディーンが魔道オーブンを作ってくれるのなら、いろいろなお料理が簡単に作れるようになるわね」
さっきまで何にも言ってなかったけど、実はお母さんも魔道オーブンができたらいいなぁって思ってたんだって。
だから僕とお姉ちゃんの話を聞いて大喜び。
でね、そんな所にオーナーさんが帰ってきたんだ。
「あら、おかえりなさいオーナー。早かったですね」
ほんとはね、特許って登録する人が行かないとダメなんだって。
でも他の人が申請するならと商業ギルドでいろんな書類とかを作んなきゃいけないそうなんだ。
だからアマンダさんは、きっとオーナーさんが帰ってくるのが遅くなると思ってたんだってさ。
「ああ。今回は私が代理で登録を申し込んだから認められるまで時間がかかるかと思ったんだが……」
そんなアマンダさんに、オーナーさんもそう思ってたって言ったんだけど、
「受付で申請してみたら、ルディーン・カールフェルトさんの登録ですか? はい、解りました。書類を通しておきますと言われてな、私は一瞬何が起こったのかと思ったよ」
オーナーさんは、あんまりあっさりと通ったもんだからびっくりしたんだって。
「ああ、それは多分ルディーン君がすでに商業ギルドに入会済みだからだと思いますよ」
でもね、ここでルルモアさんが僕が冒険者ギルドの会員だからだって言うんだ。
「ああ、そう言えば前にルディーンが作った魔道具を売るために商業ギルド会員になったとハンスが言ってましたわ」
「お父さんが? そっか、僕知らなかった。でも、ルルモアさん。なんで商業ギルドに入ってるとすぐに通るの?」
「正確に言うと、この場合は既に別の特許を取っているからと言った方がいいわね」
僕はお店やってないでしょ? なのに商業うギルドに入ってるって事は、何かの特許をもう取ってるんだなぁってルルモアさんは思ってたんだって。
でね、1っぺんでも特許を取った事がある人は、もういろんな事が商業ギルドに登録されてるから次からは簡単に受け付けてくれるそうなんだ。
「なるほど。そう言う理由だったんですか」
「はい。ただ、申請が簡略化されるだけで、審査は普通に行われるんですけどね」
こういうのを考えたんだって言いに行っても、それがまだ誰も特許を取って無いのかどうかなんて解んないでしょ?
だから受け付けはすぐしてくれるけど、今日言いに行ったのが特許が取れるかどうかはまだ解んないんだってさ。
長かったお菓子屋編はこれで終わりです。
いやぁ、ほんとになんでこんなに長くなったんだろう?w